訃報は、たいていの場合前触れなく届きます。喪服の着物はたんすにしまってあるけれど、帯や小物までひとそろい揃っているか、とっさには思い出せない。そんなお電話をいただくことがございます。黒であればどれでもよいのか、それとも白のものを混ぜてよいのか。順番に確認してまいりましょう。
喪服の着物は「黒無地に五つ紋」が基本です
結論から申し上げますと、和装の正喪服は黒無地の着物に染め抜きの五つ紋を入れたものです。背中、両胸、両袖の後ろに家紋を白く染め抜いた、最も格の高い喪服の形になります。帯・帯揚げ・帯締めもすべて黒無地でそろえるのが決まりで、ここに柄物や色物が入る余地はございません。紋の数や意味については、着物の紋、五つ・三つ・一つで何が変わる?家紋と女紋、染め抜きと縫いをやさしく整理で詳しく触れておりますので、あわせてご覧いただくと理解が深まります。
帯・帯締め・帯揚げ・草履・バッグは黒でそろえます
着物本体だけでなく、身につける物のほとんどを黒で統一するのが正喪服の考え方です。具体的には次の通りです。
- 帯 黒共帯(名古屋帯)を一重太鼓に結ぶのが一般的です
- 帯揚げ 黒無地
- 帯締め 黒の平打ちひも
- 草履 光沢のない布製の黒無地
- バッグ 光沢のない布製の黒無地
帯留めやかんざしなどのアクセサリー類は、正喪服では身につけません。人目に付く小物はすべて黒でそろえる、が最も分かりやすい基準です。光る素材やエナメル素材の草履・バッグは、慶事用の物と間違えやすいので、購入時によく確かめておくと安心です。
足袋・半衿・長襦袢は白 なぜ黒ではないのか
ここで意外に思われる方が多いのですが、足袋・半衿・長襦袢は黒ではなく白を合わせます。全身を黒でまとめる装いの中で、この三点だけが白いままというのは、はじめて喪服を揃える方にはやや不思議に映るかもしれません。ただ、これは複数の資料で一致している共通の決まりであり、地域や家庭による違いというよりは、和装の喪服として広く定着している形です。半衿は無地の白を、足袋も柄のない白足袋を選びます。足袋のサイズが合わないと立ち姿にも影響しますので、足袋のサイズと選び方|素材・色・足袋カバーの違いをやさしく解説を参考に、当日困らないよう事前に確かめておくとよいでしょう。
なお、これはお葬式や告別式でお召しになる正喪服の話です。法事や法要では立場や回数によって正喪服より格を下げた装いを選ぶ場合もございます。お立場・地域によって変わる部分ですので、法事・法要の着物、正喪服・準喪服・略喪服はどう選ぶ?色無地や小物のマナーもやさしく解説もあわせてご確認いただくと迷いが少なくなります。
家にある黒紋付、そのまま着られるか確かめる三つの点
お母様やお祖母様から譲り受けた黒紋付が、たんすの奥に眠っているというお宅も少なくありません。大切に受け継がれてきた一着ですから、状態さえ整っていれば心強い味方になってくれます。着る前に、次の三点を確かめてください。
- 家紋 ご自身が入るべき紋と一致しているか。嫁ぎ先の紋か実家の紋か、迷われたときはご家族や呉服店に確認するのが確実です
- 生地の状態 黄ばみ、シミ、カビ特有のにおいがないか。長くしまわれていた着物は一度専門店で点検してもらうと安心です
- サイズ 身丈や裄が今のご自身の体型に合っているか。合わない場合は仕立て直しができるか相談してみましょう
三点とも問題がなければ、そのまま着用いただけます。帯や小物だけを買い足すという選び方も十分に現実的です。
手元に無いとき、まず考えるのは「いつまでに届くか」です
家に黒紋付が無い、あるいは状態が整わないと分かったとき、何を選ぶかを決める最大の条件は、値段でも生地でもなく、届くまでの日数です。弔事は急に決まりますから、当日までに手元に来るものだけが選択肢になります。その前提でひとつずつ整理してまいります。
和装の喪服が要るのは、主に喪主・ご遺族・ご親族の立場です
一般の参列者であれば、洋装のブラックフォーマルで失礼にあたることはございません。読者の皆さまが全員、和装を用意しなければならないわけではない、ということを先に申し上げておきます。和装で送りたい方、または立場として和装が求められる方だけが、この先を読み進めてくだされば十分です。
最初に確かめたいのは葬儀社です
葬儀社が喪服のレンタルと着付けをまとめて扱っている場合があります。式の段取りと一緒に手配できるため、通販で取り寄せるより早く手元に届くことも多く、着付けの人も同時に決まります。打ち合わせの際に「和装の喪服の用意は頼めますか」とひとこと尋ねてみてください。ここで手配できれば、この記事で悩む必要はほとんど無くなります。
通販で借りるなら「あす楽」の表示があるものを目安に
葬儀社で用意できないときは、通販のレンタルが次の候補になります。楽天市場には「あす楽」という、注文の締め切り時刻までの申し込みを翌日にお届けする仕組みがあり、喪服のレンタルにもこの表示のあるものがあります。選ぶときは「あす楽」の表示があるものを目安にし、締め切りの時刻と自分の地域が対象かを、注文の前に必ず確かめてください。対応するかどうかはショップごとに違い、後から外れることもあります。締め切りの時刻と配送地域で条件が変わり、翌日に届くかどうかはその条件次第です。届く日をショップの表示で確かめたうえで申し込むのが安心です。
レンタルの喪服には、多くの方が着られるように一般的な紋(通紋)が入っていることが多くあります。ご自身の家紋ではありませんが、マナーの上で問題になることはございません。急場で家紋にこだわって間に合わなくなるより、通紋の一着で落ち着いてお見送りするほうが、故人にもご自身にも優しい選び方だと衣暦編集部は考えます。
葬儀社で用意できなかった方や、通販で借りると決めた方へ。楽天市場で着物の喪服レンタルだけを商品名で絞り込んだ検索結果です。あす楽の表示があるものを目安に、締め切りの時刻と配送地域がご自身に当てはまるかを、商品ページで確かめてからお申し込みください。
借りても、自分で着られるとは限りません
忘れられやすいのが着付けの手配です。喪服が届いても、五つ紋の着物を一人で着るのは慣れていないと難しく、当日の朝に困ってしまうことがあります。レンタルを申し込む段階で、着付けをどこに頼むかもあわせて決めておいてください。葬儀社、近くの美容室、出張の着付け、いずれでも構いません。喪服の手配と着付けの手配は、必ず一組で考えることが、当日を落ち着いて迎えるいちばんの近道です。
購入が向く方もいらっしゃいます
これから何度も着る予定がある方や、ご自身の家の紋を入れた一枚を長く着ていきたい方には、購入が向いています。その場合は、喪服セットとして販売されているものの中身を確かめてから選ぶと、買い足しの手間が減ります。
- 着物・帯・帯揚げ・帯締め・草履・バッグ・長襦袢・足袋が含まれているか
- 帯は名古屋帯か、結び方に不慣れな場合は付け帯タイプも選べるか
- 紋は入っているか、家紋を後から入れる必要があるか
二点だけ、購入の前に知っておいていただきたいことがあります。ひとつは、中古の黒紋付には前の持ち主の家紋が入っており、五つ紋を入れ替えるには日数と費用がかかること。急ぎの場面には向きません。もうひとつは、喪服は着る機会が少ないぶん、しまっている間の防虫と湿度の管理が要ること。すぐに着る必要があるならレンタル、長く着ていくなら購入、と分けて考えると迷いが少なくなります。
まとめ
喪服の着物は、黒無地に五つ紋の着物を軸に、帯・帯締め・帯揚げ・草履・バッグを黒でそろえ、足袋・半衿・長襦袢だけを白にする組み合わせです。家にある黒紋付は、家紋・生地の状態・サイズの三点を確かめれば、そのまま活躍してくれます。手元に無いときは、届く日数から考えて、葬儀社への相談、あす楽の表示があるレンタル、そして着付けの手配を一組で進めてください。悲しみの席ではありますが、故人をきちんとお送りするための身支度です。どうか慌てず、落ち着いて当日を迎えていただければと思います。
