友禅と聞くと、あの色とりどりの絵羽模様を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。ですがこの友禅、実は「手描き」と「型染め(かたぞめ)」という、まったく違う二つの道でつくられています。今日は、その違いをやさしくひもといていきましょう。

🌸 まずここを見る(お急ぎの方へ)

手描き友禅は職人が糸目糊で一本ずつ線を引き、手で彩色していく技法。型友禅(型染め)は型紙と色糊を使って染める技法です。柄の縁に、白い糸のような線が見えたら、手描きの証といえます。

手描き友禅 一本の線に、手のぬくもり

手描き友禅は、もち米を原料にした糊を、細い筒から絞り出すようにして描いていきます。この糊の線は「糸目」と呼ばれ、隣り合う色が混ざらないよう、模様の輪郭を防染してくれるのです。糊を引いたあとに彩色をほどこし、さらに防染糊で保護してから染め上げます。よく見ると、柄の輪郭にほんの少し白い線が見える——それが、手描き友禅の見分け方です。

型友禅 型紙が生み出す、もうひとつの美

いっぽう型友禅は、柿渋紙でつくった型紙と色糊を使って染める技法です。型紙は繰り返し使えるため、同じ柄を多くの反物に染めることができます。複雑な図案になると、百枚を超える型紙を使うこともあるのだとか。明治のはじめ、海外から合成染料が伝わったことをきっかけに発展した、比較的新しい技法でもあります。

🌸 ここだけ覚える。柄の縁に白い糸目が見えれば手描き、見えなければ型友禅——まずはこの一点だけ、覚えてみてください。



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京友禅と加賀友禅、二つの個性

友禅のなかでも、とりわけ名高いのが京友禅と加賀友禅です。二つは同じ「友禅斎」の技法から生まれながら、まったく違う個性を育みました。

図1 京友禅と加賀友禅の違い
観点 京友禅 加賀友禅
装飾 金箔・金銀粉・刺繍を多用し、華やか 金銀箔や刺繍をほとんど用いず、染めのみで仕上げる
柄の傾向 優雅で明るい色の調和 藍・黄土・緑・古代紫・臙脂の「五彩」による写実的な草花
技法の特徴 完全分業制(デザイン・糊置き・染色・刺繍の職人が分業) 外ぼかし(外を濃く中心を淡く)・虫喰いの表現
産地 京都 石川県金沢市周辺

※歴史的な起源については、伝承として伝えられている部分を含みます

友禅の技法は、江戸時代中期に京都の扇絵師・宮崎友禅斎が確立したと伝えられています。その技が金沢にも伝わり、加賀の地で独自の発展を遂げたのが加賀友禅——同じ根から、二つの個性が枝分かれしていったというわけです。加賀友禅は1975年、国の伝統的工芸品としての指定を受けています。

よくある質問

Q. 手描きと型染め、どちらが格上ということはありますか?

A. 技法そのものに優劣があるわけではありません。どちらも高度な技術が求められる、それぞれの美しさを持つ技法です。

Q. 京友禅と加賀友禅、初心者はどちらから知るとよいですか?

A. まずは装飾の有無に注目してみてください。金箔や刺繍(ししゅう)が施されていれば京友禅、写実的な草花が染めだけで表現されていれば加賀友禅、という見方から入ると分かりやすいでしょう。

Q. 東京友禅というのも聞いたことがあります

A. 三大友禅のひとつとして数えられることがあります。本記事では京友禅と加賀友禅を中心にご紹介しました。

まとめ

  • 手描き友禅は糸目糊で防染しながら手作業で彩色する技法。柄の縁の白い線が目印
  • 型友禅(型染め)は型紙と色糊を使う技法で、明治期の合成染料導入とともに発展
  • 京友禅は金箔や刺繍を多用した華やかさ、加賀友禅は染めのみで表現する写実的な草花が個性

知れば知るほど、一枚の柄に染め職人の手仕事が見えてきます。今日の一枚に、小さな物語を添えてみてはいかがでしょうか。「染め」の友禅に対して、「織り」の世界をひもといた紬入門もあわせてどうぞ。実際に友禅の一枚を手に入れたい方は、着物はレンタルと購入どっちがいい?もあわせてご覧ください。

染め・織り・文様など着物の素材と技法に関する記事は染織と文様ガイドでまとめています。