「浴衣、今年は借りる? それとも、思いきって買っちゃう?」——花火大会に夏祭り、旅行先の街歩き。夏が近づくと、毎年のように顔を出す迷いですよね。答えは「何回着るかで決まる」とよく言われます。でも本当に知りたいのは、その「何回」が具体的に何回なのか、ということ。そこで今回は、レンタル1回の料金と浴衣の値段を実際に並べて、元が取れる回数を計算してみました。衣暦編集部の見立ても添えて、借りる派にも買う派にも公平に。着物全般で迷っている方は、着物はレンタルと購入どっちがいいの記事もあわせてどうぞ。

🌸 まずここを見る(お急ぎの方へ)

着付け込みのレンタルは1回5,000円前後。帯や下駄まで入った手ごろな浴衣セット(1〜2万円台)なら、2〜4回着れば購入のほうが安くなります。今年1回きりならレンタル、来年も着るつもりなら購入。ただし「自分で着られるか」で回数が動くので、下の表で確かめてみてください。

何回着れば元が取れる? 数字で出してみました

まずはレンタルの料金から。浅草や京都の店舗レンタルは、浴衣・帯・下駄・巾着に着付けまで込みで1回2,000〜1万円ほど。ヘアセットが付くプランは、この幅の上のほうに寄ります。自宅に届く宅配レンタルなら、着付けは付きませんが、1週間5,000円前後で数日借りられるサービスもあります。この記事では計算の前提を、真ん中あたりの5,000円に置きます。

いっぽう買う場合は、帯と下駄まで入ったセットで5,000円〜2万円台が中心で、3万円前後の浴衣もよく見かけます。この2つの数字を並べると、元が取れる回数はこう計算できます。

買う浴衣(帯・下駄込みの総額) レンタルと並ぶ回数
1万円のセット 2回
2万円のセット 4回
3万円の浴衣 6回
10万円の浴衣(反物+仕立て代+帯) 20回

衣暦編集部の計算。レンタル1回5,000円(着付け込み)で購入総額を割った回数です。料金は2024〜2026年に公開された浅草・京都のレンタル店と、複数の店の案内をもとにした目安で、店・プラン・時期によって変わります。

表を見ると、手ごろなセットなら「2年目の夏」で購入が追いつきます。夏祭りと花火大会で年2回着るなら、1年で並ぶ計算。分かれ目は「来年も着るかどうか」、この一点です。3万円台より上の浴衣は、3〜4年着る前提で考えると納得しやすいと思います。

見落としがちなのが「着付け代」

上の表には、ひとつ前提があります。買った浴衣を自分で着ること。レンタル店の案内では、美容室で着付けを頼むと1回2,500〜5,000円ほど。たとえば2万円のセットを買って毎回4,000円で着せてもらうと、レンタル(5,000円)との差は1回たった1,000円で、並ぶまでに20回かかります。自分で着られない人にとって、購入の元が取れる日はぐっと遠いんです。裏を返せば、浴衣の着付けを覚えてしまえば表のとおりに差が縮まります。浴衣は帯締めや帯揚げが基本は要らないので、着物より覚えることが少なめ。着付け教室の記事で「浴衣だけ習う」選択肢ものぞいてみてください。

レンタル料金に「何が入っているか」だけは確かめて

レンタルが向いていそう、となったら、料金より先に中身を見ます。多くの店は浴衣・帯・下駄・巾着と着付けが一式ですが、ヘアセットの扱いは店によって違います。浅草のレンタル店は「浅草はヘアセット込みが主流で、京都はオプションの店が多い」と案内しているので、同じ5,000円でも受け取れるものが変わるわけです。もうひとつ、レンタルは予約が要るぶん、雨で日を改めたいときに融通がききにくいのが弱点。予約のときにヘアセットの有無・返却時刻・雨天の変更条件の3つを聞いておくと、当日あわてません。

買うなら、いくらの浴衣? 3つの価格帯

「買う」と決めても、浴衣の値段はセットの数千円から反物の十数万円まで、ひと続きにつながっています。衣暦編集部の見立てで、大きく3つに分けてみます。

  • 手ごろなセット(5,000円〜2万円台)——帯と下駄が付いて、洗濯機で洗える木綿やポリエステルが多い価格帯。最初の一枚はここで十分です。
  • 仕立て上がりの一枚もの(3〜5万円)——呉服店の案内では、撫松庵のような和装ブランドの仕立て上がり浴衣が4〜5万円ほど。柄と生地の選択肢がぐっと広がります。
  • 反物から仕立てる浴衣(10万円前後〜)——藤井絞の雪花絞や誉田屋源兵衛の反物が4〜13万円で、ここに仕立て代が別にかかります。生地を折りたたんで型で染める雪花絞、布をくくって染める有松鳴海絞のように、手仕事の技法が価格の差になります。絞りの浴衣や、竺仙のような老舗の浴衣は、さらに上を見ておくのが実際に近いところです。

ここで見落としやすいのが、浴衣本体より小物で総額が動くこと。同じ2万円の浴衣でも、帯を既製の半幅帯にするか織りの帯にするか、下駄を桐にするかで、上の表の「回数」が変わってきます。買うときは浴衣の値札ではなく、帯と下駄まで入れた合計で表と見比べてください。反物の浴衣は「仕立て代が別」も忘れずに。

手入れは本当に大変? 木綿なら洗濯機、絞りは専門店

「買うと手入れが大変」——レンタルを勧める記事によく出てくる言葉で、なかには「家庭の洗濯機では洗えないことがほとんど」と書くものもあります。でも浴衣に限っては、少し違います。木綿・麻・ポリエステルの浴衣は、洗濯表示を確かめれば自宅で洗えるものが多いんです。洗濯ネットにたたんで入れて、中性洗剤の弱い水流で洗い、脱水は短め、陰干しで乾かす。藍染めのような濃い色は、目立たない場所で色落ちを確かめてからにしてください。

逆に、専門店に頼みたいのが絞りの浴衣と、絹紅梅のような絹の入った高級浴衣です。絞りは自宅で洗うと、あのぽこぽこした風合いを損ねやすい。絹紅梅は、太い格子の糸に木綿、地の細い糸に絹を使って織った生地で、絹は水で縮むため家で洗うのには向きません。長襦袢を合わせて夏着物として着ることも多い、浴衣のなかでは別格の一枚です。衣暦編集部としては、どちらも買った店や呉服専門店に手入れを頼むのが安心だと考えています。店に頼む場合の費用は1着1,000〜7,000円ほどと店で幅があるので、買うときに「この浴衣、家で洗えますか」と聞いておくのがいちばん確かです。

保管も、木綿なら洗って乾かして、本だたみ(浴衣本来のたたみ方)で引き出しにしまえば十分。手入れの手間を理由に、レンタルへ寄せる必要はないと覚えておいてください。着たあとの汚れの落とし方は花火大会の浴衣、着崩れと汚れを防ぐ記事で詳しく書いています。

借りる・買う、それぞれの弱点も正直に

ここまで数字と手入れの話をしてきたので、最後に両方の弱点を並べておきます。どちらかを持ち上げるためではなく、決めたあとに「聞いてない」とならないために。

  • レンタルの弱点——予約が要り、雨で日を改めにくい。身長や体格に合うサイズと、帯や下駄の質は、店にあるものの中から選ぶことになる。毎年借りると、費用は着るたびに積み上がる。
  • 購入の弱点——最初にまとまった出費がある。自分で着る前提なので、着付けを頼むと元が取れる回数が遠のく(上の「着付け代」の段落)。しまう場所が要り、流行の柄を選ぶと翌年に着づらく感じることもある。

裏返すと、毎回ちがう柄を着たい・保管したくない人はレンタル、気に入った一枚を自分の寸法で着続けたい人は購入が向いています。サイズが合っているかは着姿の心地よさに直結するので、レンタルでも予約のときに身長を伝えて確かめておくと安心です。

旅行先なら現地レンタル、近所の花火大会なら宅配

レンタルを選ぶなら、借り方は2つ。旅行先で着るなら、現地の店舗で着付けまで済ませて手ぶらで街へ出られる店舗レンタルが身軽です。流れは観光地で着物レンタルを楽しむ記事にまとめています。近所の夏祭りや花火大会なら、自宅に届く宅配レンタルのほうが、着替えて出かけてそのまま返せます。夏祭りそのものの楽しみ方は盆踊りと浴衣の記事もどうぞ。

来年も着るかまだ決めきれない、まずは今年1回だけ借りて様子を見たい——そんな方には、宅配レンタルが向いています。わらくあんは浴衣の宅配レンタルを扱っているので、料金に帯や着付け小物まで含まれるか、返却の期限はいつかを公式サイトで確かめてみてください。

借りて一度着てみて「来年も着たい」と思えたら、そのときが買いどきです。

まとめ 答えは「2〜4回」、迷ったら今年は借りて確かめる

冒頭の「何回着れば」の答えは、手ごろなセットなら2〜4回。今年の花火大会1回きりならレンタル、来年も着るつもりなら、帯と下駄まで入った1〜2万円台のセットを買うほうが安くつきます。木綿の浴衣は自宅で洗えるので、手入れを理由に借りる側へ寄せなくて大丈夫。絞りの浴衣や、絹紅梅のような絹の入った高級浴衣だけは専門店へ。そして3年目の夏にも袖を通していたら、次は反物から一枚仕立てる番です。衣暦編集部のおすすめは、迷ったら今年は借りて、「来年も着たい」と思えるかを自分で確かめること。その答えが出たとき、表の数字があなたの味方になります。