反物を前に、淡いピンクにしようか、それとも落ち着いたグレーにしようか。しばらく手が止まってしまう。色無地の色選びでは、よくある光景です。柄がない一枚だからこそ、色そのものが印象を決めてしまいます。どの色を選べば、入学式にもお茶会にも困らずに着ていけるのでしょうか。
結論から申し上げますと、迷ったら中間色が確実です
結論から申し上げますと、色無地を一枚だけお仕立てになるなら、濃すぎず薄すぎない中間色をお選びになると安心です。地紋を選べる場合は、慶事にも弔事にも対応できる柄を選んでおくと、その後の着用範囲が広がります。派手すぎる色は着る場面を選びますし、地味すぎる色は華やかな席で寂しく見えてしまうことがあります。一枚で幅広い場面に対応させたいなら、色も柄も「両方に寄せすぎない」のが基本の考え方です。
そもそも色無地の格は、紋の数で決まります
色選びの前に、色無地という着物そのものの仕組みを順番に確認してまいりましょう。色無地の格は、色そのものではなく、家紋の数によって変わります。格式の高い順に並べると、五つ紋・三つ紋・一つ紋・紋なしとなり、紋の数が多いほど改まった場にふさわしい装いになります。
一つ紋が付くと、訪問着や附下と同じ位置づけの略礼装として着られるようになり、結婚式やパーティー、お茶会など着用できる場面が最も広くなります。だからこそ、色無地を一枚仕立てるなら一つ紋にする方が多いのです。紋なしの場合は小紋や紬と同じカジュアルな普段着の扱いになります。紋の詳しい種類や入れ方については、着物の紋、五つ・三つ・一つで何が変わる?家紋と女紋、染め抜きと縫いをやさしく整理で詳しく整理していますので、あわせてご確認ください。
なお、地紋(織り出された柄)は格式を示すものではありません。地紋がないと見た目にはカジュアルな印象になりますが、格を決めているのはあくまで紋の数だという点は、覚えておいて損はありません。
色の印象で選ぶ 淡い色とシックな色の違い
色無地は無地であるぶん、どんな帯や小物とも合わせやすく、場面を選ばずに着られるのが良さです。そのうえで色の選び方一つで印象が大きく変わります。淡いピンクやブルーは優雅で上品な雰囲気になり、グレーや黒はシックで大人らしい雰囲気を演出します。華やかに見せたいか、落ち着いた印象にしたいかで、選ぶ色の方向性が変わってくるとお考えください。
場面で見る 入学式・卒業式・お茶会で通る色
場面が決まっている場合は、季節の雰囲気に寄せて考えると選びやすくなります。春の入学式には淡い色が明るく調和しますし、冬の卒業式には落ち着いたグレーや黒に、金銀の帯を合わせる装いがよく用いられます。学校行事での色無地の選び方は、入学式・卒業式の母親の着物 学校行事で浮かない選び方でも詳しくご案内していますので、あわせてご覧ください。
お茶会については、一つ紋の色無地が今でもよく選ばれています。紬は格のうえで普段着に近く、お茶会には基本的に向きません。その点、一つ紋の色無地であれば略礼装として通用しますので、茶席の装いに迷ったときの選択肢として便利です。
紋を入れるなら、色も帯も落ち着いた方向で
紋を入れて格を上げる場合は、色の選び方も少し変わってきます。一つ紋には、品格のある袋帯や綴織の名古屋帯を、シーンに合わせて選ぶとよいでしょう。渋め・暗めの色を選んでおくと、黒色の帯を合わせて略式の喪服として、薄いグレー地の帯を合わせて法事にも着用できるという利点があります。慶事にも弔事にも一枚で対応させたいなら、色は明るすぎない方向でお考えになると安心です。法事の装いの詳しい格については、法事・法要の着物、正喪服・準喪服・略喪服はどう選ぶ?もあわせてご参照ください。
三つ紋・五つ紋の場合は、無紋の訪問着より格が上がる準礼装、あるいは式服にあたる装いになりますので、帯だけでなく帯揚げ・帯締めなどの小物も礼装用のものでそろえます。慶弔どちらにも使える地紋を選ぶなら、流水や雲、波、有職文様が向いており、色は紫・藍・鼠系がなじみやすいとされています。慶事専用と決めているなら、吉祥文様の地紋を選ぶ手もあります。紋の数が上がるほど、色・地紋・帯・小物のすべてを礼装向きにそろえる意識が必要になる、と覚えておいてください。
色を決めきれないときは、実際に着て確かめる方法もあります
反物の色見本と、実際に着たときの顔映りは、印象が違って見えることが少なくありません。色を一つに絞りきれないときは、レンタルで数色を試してみるのも一つの方法です。鏡の前で羽織ってみると、写真や見本では気づかなかった雰囲気の違いが分かることがあります。お手持ちの帯との相性も、実際に合わせてみたほうが判断しやすいものです。
候補の色を一つに絞りきれないときは、仕立てる前に一度借りて袖を通してみる方法があります。宅配レンタル衣裳アイビスの色無地なら、行事の前に候補の色を実際に着て、顔映りやお手持ちの帯との相性を鏡の前で確かめられます。
まとめ
色無地の色選びは、紋の数、帯合わせ、着る場面という三つの軸で考えると迷いにくくなります。迷われたときは、中間色で紋一つ、地紋は慶弔両用のものを選んでおくのが確実です。お立場や地域によって、紋の数や色の慣習が変わる部分もありますので、家族やお付き合いのある呉服店にひと言ご確認いただくと、より安心です。……と、ここまで手順を申し上げましたが、色無地はどんな色を選んでも、その方らしい上品さがきちんと出る着物です。当日は、選んだ一色を存分に楽しんでお召しになってください。
