山鉾のちょうちんが夕暮れの通りに灯るころ、浴衣にしようか、それとも着物にしようか——迷う方は少なくないでしょう。宵山の写真をSNSで眺めていると、浴衣姿も着物姿も混ざっていて、どちらが正解なのか分からなくなるのも無理はありません。結論から言えば、祇園祭の見物は浴衣で十分に楽しめます。その理由を、祭りの成り立ちから順にひもといていきましょう。

祇園祭とはどんな祭り?

祇園祭は京都市東山区の八坂神社の祭礼で、貞観年間(859年〜877年)より続く京都の夏の風物詩です。7月の1か月にわたって行われる祭りで、1日の「吉符入」にはじまり31日の「疫神社夏越祭」まで、さまざまな神事が積み重なっていきます。日本三大祭のひとつに数えられ、なかでも山鉾巡行は“動く美術館”とも称される、祭りいちばんの見どころです。

山鉾巡行——動く美術館を見物する

5〜8階建てのビルほどもある山鉾が通りをゆく光景は、一度見ると忘れがたいものがあります。前祭は宵山が7月14日から16日、巡行が17日。後祭は宵山が21日から23日、巡行が24日という日程です。巡行の前の宵山期間は、それぞれの町に建つ山鉾を間近で観覧できる時間で、提灯の灯る夜の町を歩くだけでも祭りの気配を存分に味わえます。ふと目に留まるのは、山鉾を彩る懸装品の織や染めの豊かさ。この装飾を眺めるために毎年通うという人がいるのも、うなずける話です。

浴衣と着物、祇園祭にはどちらが似合う?

ここで気になるのが、装いの格の違いです。浴衣は綿や麻、ポリエステルなど軽くて通気性の良い素材で作られ、もともとは湯上がりの寝間着として使われていたもの。今では夏祭りや花火大会といったカジュアルなシーンでのおしゃれ着として親しまれています。帯は半幅帯が中心で、帯締めや帯揚げは基本的に使いません。一方の着物は、結婚式やお茶会など改まった場で着用されるフォーマルウエアで、名古屋帯や袋帯を合わせてこそ格が整います。浴衣と着物の違いとは?成り立ち・格・仕立て・着こなしをやさしく整理でも触れているとおり、この二つは似て非なるものなのです。祇園祭の華やかな雰囲気と歴史ある町並みには浴衣姿がよく似合うとされ、山鉾や提灯を背景にした写真映えの良さも、選ばれる理由のひとつでしょう。

見物するときの装いの配慮

浴衣にするか着物にするかを決めたら、次に気を配りたいのが履物です。浴衣は素足に下駄、着物は足袋に草履もしくは雪駄(せった)というのが本来の組み合わせ。人混みのなかを長時間歩く宵山や巡行見物では、履き慣れた足元かどうかが当日の疲れを大きく左右します。慣れない下駄で炎天下を歩き通すのは、なかなかの体力勝負。休憩できる場所をあらかじめ地図で確認しておくと、余裕を持って祭りを楽しめます。透ける素材の着物で涼を取り入れたい方は、絽・紗・麻——透ける着物にひそむ、涼のかたちも参考にしてみてください。


夏の着物をレンタルで借りるなら、商品ページで対象商品と利用日、セット内容、返却の条件を確かめてから申し込みましょう。記事で整理した条件に照らすと、必要な準備がはっきりします。


レンタルで気軽に祭りへ

手持ちの浴衣や着物がなくても、観光地では夏素材の着物や浴衣レンタルのプランが整っています。足袋や草履がソックスタイプで用意されていたり、女性向けに羽織のレンタルが選べたりと、旅先での準備をひとつずつ省いてくれるのはありがたいところ。慣れない土地での着付けが不安な方は、レンタル店選びのポイントもあわせて確認しておくと安心です。

浴衣か着物か——その答えは、格の物差しでいえば案外はっきりしています。宵山の夜風に吹かれながら山鉾を見上げる時間に、今日の一枚に、小さな物語を添えてみてください。