訪問着を着る予定が決まると、まず気になるのが色柄選びではないでしょうか。「若い頃に選んだ色が、今の年齢に合っているだろうか」「地味にしすぎて、お祝いの席で沈んで見えないだろうか」。この二つの不安は、実はまったく別の理由から生まれています。浮いて見える原因が「若すぎる」なのか「地味すぎる」なのかを切り分けると、選び方はぐっと分かりやすくなります。順番に確認してまいりましょう。
結論から申し上げますと
結論から申し上げますと、訪問着の色柄選びで見るべきは地色の明るさ・柄の大きさ・柄の量の三つです。年代が上がるにつれて、地色は少しくすみを含んだ落ち着いた色へ、柄は大きすぎないものへと目安が移っていきます。ただしこれは「年代が上がるほど地味に」という単純な話ではありません。むしろ40代・50代で気をつけたいのは、若づくりよりも地味すぎるほうです。ご安心ください、それぞれの境目を具体的に見てまいります。
そもそも訪問着とはどんな着物か
色柄の話に入る前に、訪問着そのものの特徴を確認しておきましょう。訪問着は、着物の縫い目をまたいで柄が描かれる点が最大の特徴です。肩から胸、袖、そして裾にかけて、まるで一枚の絵のように模様が流れてつながっています。これを絵羽模様と呼びます。
絵羽模様は、いったん白生地を着物の形に仮仕立てしてから下絵を描き、それを解いて友禅染めなどを施すという手間のかかる工程で作られます。現代の一般的な訪問着では、上前の裾を柄の中心(ポイント)として、左の衿から左胸、左袖にかけて模様がつながり、右袖の外側にも文様が入るのが主流です。似た着物に付け下げがありますが、こちらは絵羽模様を簡略化し、仮仕立てをせず反物のまま柄が上を向くように染めたものです。仕立てる手間の違いが、そのまま格や柄のつながり方の違いになっていると考えると分かりやすいでしょう。
「若すぎる」「地味すぎる」を分ける三つの要素
訪問着が浮いて見えるとき、その原因は地色・柄の大きさ・柄の量のどこかに偏りがある場合がほとんどです。20代・30代で目立ちやすいのは、原色に近いはっきりした地色や、大ぶりな髪飾りなど「やりすぎ」による悪目立ちです。若い方には彩度の高い色や大きな柄がよく似合う一方で、同じ色柄でも鮮やかさや柄の大きさの加減次第で浮ついた印象になってしまう、という指摘もあります。
一方で40代・50代に多いのは逆のパターンです。若づくりに見えないよう気を遣うあまり、パステルカラーのように若い印象の色を避けすぎたり、反対に極端な地味色に寄せすぎたりして、かえって品格不足に見えてしまうケースが挙げられています。年代が上がるほど地味にすればよいわけではなく、落ち着いた中間色や深みのある色で品格を出すという考え方のほうが実情に近いようです。
年代別に見る、浮かない色の目安
色の傾向を年代ごとに整理すると、次のような目安になります。
- 20代〜30代 彩度の高い色や大ぶりな柄が似合いやすい年代です。30代には明るいピンクや藤色、水色、ラベンダー、淡いクリーム色などが人気で、華やかさを楽しめます。
- 40代 明るさの中にほんのりくすみを含んだ色合いが、肌になじみ上品な印象になるとされています。パキッとした原色ではなく、少し落ち着きを加えた色を選ぶ意識です。
- 50代以上 派手さを避けつつも、極端な地味色に振り切らないことが大切です。深みのある色で品格を表現する方向が、若づくりにも地味にも寄りすぎない着地点になります。
迷われたときは、極端な色に飛びつかず「中間色」を意識するのが確実です。ご自身の年代の目安を知ったうえで、次は柄の見え方も一緒に確認しておきましょう。
柄の大きさと絵羽の見え方も合わせて確認
絵羽模様には、総絵羽・部分絵羽・染め絵羽(手描き友禅)など種類があります。柄が全体に大きく流れるものほど華やかさが強く出るため、20代・30代であれば柄の大きな訪問着も似合いやすい一方、40代・50代では柄の大きさや量を少し抑えたもののほうが、品よくまとまりやすい傾向があります。地色の色みだけでなく、柄がどのくらいの面積を占めているかにも目を向けると、選び方の精度が上がります。
場面で変わる考え方
色柄の目安は、着る場面によっても優先順位が変わってきます。結婚式のようなお祝いの席では華やかさが求められますし、七五三や入学式のような学校行事では、周りの保護者の装いとのバランスも気になるところです。お立場や地域によって変わる部分ですので、迷われたときは会場や主催者に近い方にひと言ご確認なさると安心です。結婚式にお呼ばれする際の立場別の考え方は結婚式に着物で参列 立場別の選び方(親族・友人・上司)で、七五三での母親の装いについては七五三、母親は何を着る?訪問着・色無地・小紋の選び方で、それぞれ詳しく整理しています。
レンタルで柄を確かめる順番
訪問着をレンタルで選ぶ場合、写真だけで判断すると実物と印象が違って見えることがあります。次の順番で確認すると失敗が少なくなります。
- まず地色を見る。写真で最も面積が広く目に入るのは地色のため、ここが自分の肌になじむかをまず確認します。
- 次に柄の大きさと量を見る。上前の裾から胸元にかけて柄がどのくらいの広がりで入っているかを確認します。
- 最後に柄の位置を見る。絵羽模様は縫い目をまたいでつながるため、着たときに柄が途切れずつながって見えるかを確かめます。
迷ったときは、地色が自分の顔映りに合うかどうかを最優先の判断材料になさってください。柄の好みよりも、地色は写真映りにも実際の印象にも直結する部分です。レンタルと購入のどちらが向いているかで迷う場合は、訪問着はレンタルと購入どっちがいい?着る機会と頻度からわかる選び方もあわせてご覧になると判断しやすくなります。
訪問着をレンタルで借りるなら、商品ページで対象商品と利用日、セット内容、返却の条件を確かめてから申し込みましょう。記事で整理した条件に照らすと、必要な準備がはっきりします。
まとめ
訪問着の色柄選びは、地色・柄の大きさ・柄の量という三つの物差しで見ると迷いにくくなります。20代・30代ははっきりした色や大きな柄が似合いやすく、40代・50代は中間色で品格を出すことを意識すると、若づくりにも地味すぎにもならない装いに落ち着きます。……と、ここまで順番に申し上げましたが、いちばん大切なのは当日を晴れやかな気持ちで迎えることです。鏡の前で袖を通したとき、ふっと肩の力が抜けるような一枚に出会えますように。
