着物を選ぶときはあんなに悩むのに、長襦袢(ながじゅばん)はなんとなく「とりあえず1枚あればいいや」で済ませていませんか。実はこれ、ここだけの話——着心地も見た目の品格も、長襦袢選びでけっこう変わってくるんです。正絹?ポリエステル?単衣?二部式?と選択肢が並ぶと迷ってしまいますが、大丈夫、覚えるのは「素材」と「仕立て」の2つの軸だけです。順番に整理していきますね。

長襦袢の役割と基本の仕立て

長襦袢は着物の下に着る、いわば着物専用の下着のようなものです。汗や皮脂から着物を守り、衿元をきれいに見せる役目もあります。仕立て方には大きく分けて「袷(あわせ)」と「単衣(ひとえ)」があり、袷は裏地つき、単衣は裏地なしで表地だけの仕立てです。目安として、袷の着物には10月~4月頃、単衣の長襦袢は5~6月・9~10月頃に着るのが一般的とされています。ただし気候や地域によって前後することもあるので、その年の暑さ寒さに合わせて調整してもよさそうです。

単衣仕立ては裏地がない分すっきり涼しく着られる一方、背縫いの部分が裂けやすいという弱点があります。ここに「居敷当て」という補強布をつけておくと安心です。仕立てを頼むときに一言添えておくと、長く気持ちよく着られますよ。

正絹とポリエステル、素材で変わること

長襦袢選びでいちばん迷うポイントが、素材ではないでしょうか。正絹は肌触りがやわらかく保温性・吸湿性にも優れていて、見た目にも品格があるので礼装向き。良質なものは静電気も起きにくいといわれています。一方でポリエステルは静電気がやや起きやすい傾向がありますが、価格が手ごろで扱いやすいのが魅力です。

そしてここが実用面での大きな分かれ目なのですが、正絹は自宅で洗濯できず、専門店でのクリーニングが必要です。無理に自宅で洗うと縮みやゴワつきが出てしまい、アイロンをかけても戻らないことが多いんです。対してポリエステルなど化繊は自宅で洗える場合が多く、アイロン仕上げ不要の製品もあります。ただし洗濯表示は必ず確認してから、というのが失敗しないコツです。素材ごとの特徴をもう少し詳しく知りたい方は、正絹とポリエステル、着物選びで結局どっちがいいの?違いをやさしく整理もあわせてご覧ください。

半襦袢・二部式長襦袢という選択肢

「正絹は素敵だけど、お手入れが大変そう」と感じた方には、半襦袢(じゅばん)・二部式襦袢という選択肢もあります。これは長襦袢が上下に分かれたもので、上半身の「半襦袢」と下半身の「裾よけ」がセットになっているものです。身頃が綿でできていることが多く、汗を気にせず快適に着られるのがうれしいところ。しかも上下に分かれている分、着丈の調節がしやすく、身長に合わせて裾よけの位置を変えられます。

普段着として着るなら、二部式は自宅で洗濯できるのも大きな利点です。ふくよかな体型の方でも着付けがしやすく、足の動きが上半身に響きにくいので着崩れしにくいともいわれています。実はこれ、明治期の文筆家・樋口一葉も普段着として二部式襦袢を使い分けていたそうで、昔も今も「動きやすさ」を求める工夫は変わらないんですね。さらに簡略化した筒袖の半襦袢もあり、袖丈や裄(ゆき)の長さを選ばずに着られて、綿100%のものが多いのでお手入れも気楽です。カジュアルなお出かけならこちらで十分、という場面も多いはずです。

季節に合わせて選ぶなら

ここまでの内容をふまえると、季節に合わせた選び方も自然と見えてきます。袷の着物を着る寒い時期は保温性のある正絹の袷仕立て、暑くなってくる5~9・10月頃は単衣の長襦袢へ切り替える、というのが基本の流れです。単衣は裏地がない分、暖かい季節でも蒸れにくく、正絹なら防寒性・吸湿性のバランスも良いとされています。着物本体の衣替えの時期と合わせて考えると迷いにくいので、着物の衣替えはいつからいつまで?単衣と薄物の着分けをやさしく解説も参考にしてみてください。

お手入れと半衿合わせで気をつけたいこと

長襦袢は着るたびに汗をよく吸う場所でもあります。正絹は自宅で洗えない分、汗をかいたシーズンの後はできるだけ早めにクリーニングへ出すのが安心です。お店によっては「汗抜きクリーニング」に対応しているところもあるので、汗染みが気になる方は事前に確認しておくと保存しておくと安心です。ポリエステルの二部式なら洗ってすぐ乾燥させるだけで済むことが多く、日常使いのハードルはぐっと下がります。

長襦袢を選んだら、最後に忘れずチェックしたいのが半衿との組み合わせです。長襦袢の色や素材によって半衿の映え方が変わるので、季節や場面に合わせて選ぶと衿元の印象がぐっと洗練されます。詳しい選び方は半衿の選び方と付け方|季節・場面でわかるやさしいガイドにまとめているので、あわせて読んでみてくださいね。


長襦袢を探すなら、商品ページで素材やサイズ、仕様の説明を確かめてから選びましょう。記事で整理したポイントに照らすと、自分に合うものを見つけやすくなります。


まとめ

長襦袢選びは、素材(正絹かポリエステルか)と仕立て(袷か単衣か、一枚仕立てか二部式か)の2つの軸で考えると、ぐっと選びやすくなります。礼装できちんと着るなら正絹、普段使いで気楽に洗いたいなら二部式やポリエステル。この使い分けさえ覚えておけば、あとは季節と場面に合わせて選ぶだけです。いろは的おすすめは、まず普段用の二部式を1枚そろえてから、礼装用の正絹を少しずつ揃えていく順番。無理のないペースで、長襦袢との付き合いを楽しんでみてください。