かんざし売り場に立つと、ふわっと布でできたお花のものと、飴色につやめくものと、ずいぶん見た目が違うものが並んでいて、どっちを選べばいいのか迷った経験はありませんか。実はこの二つ、成り立ちからしてまったく別ものなんです。片方は布を折って作る手仕事、もう片方はもともと海の生きものの甲羅から作られてきた素材。今日はこの二つの素材について、知っておくと選びやすくなることをまとめてみます。
つまみ細工は布から生まれる手仕事
まず布でできたかんざしから。つまみ細工は、正方形の小さな布をピンセットでつまんで折り、花びらの形にしていく手芸なんです。糸や針を使わず、糊や接着剤で組み立てていくのが特徴で、布を折る・つまむ・貼るという工程だけで一輪の花になっていくところが面白いんですよね。仕上げに使う布の色や柄によって、同じ折り方でも雰囲気ががらっと変わります。
基本の技は丸つまみと剣つまみ
つまみ細工には基本の技法が二つあります。丸みをもたせて折る「丸つまみ」と、先を鋭くとがらせて折る「剣つまみ」です。丸つまみは花びらに、剣つまみは葉っぱに使われることが多く、この二つを覚えるだけでずいぶんいろんな花が作れるようになるそうです。布の角をきちんと合わせてボンドで固定する、というのが共通の手順で、見た目はふわっと柔らかいのに、作り方はけっこう几帳面な作業の積み重ねなんです。
べっ甲は今、とても希少な存在に
一方、飴色につやめくべっ甲は、ウミガメの仲間であるタイマイという生きものの甲羅を材料にした素材です。長く簪や眼鏡のふちなどに使われてきましたが、今はこの甲羅そのものが手に入りにくくなっているんです。
ワシントン条約とタイマイ
タイマイは絶滅のおそれがある生きものとして、ワシントン条約で国際取引が禁止されています。日本は条約に加盟した1980年の時点では例外的な扱いを認められていましたが、1994年にその扱いを撤回しました。これにより1992年以降、べっ甲の材料となる甲羅を海外から新しく輸入することはできなくなっています。ただし、これは国どうしの取引を規制するものなので、すでに国内にある材料でべっ甲製品を作り、国内で販売すること自体は禁止されていません。今出回っている本べっ甲の品は、輸入が止まる前に確保されていた材料や、その端材を使って作られたものなんですね。
「べっ甲」という表示、実は…
ここで気をつけたいのが、「べっ甲」という言葉の使われ方です。材料が希少になったぶん、今は「べっ甲風」「べっ甲調」と呼ばれる、本物ではない品もたくさん流通しています。樹脂の土台に薄い本べっ甲を貼り合わせた「べっ甲張り(張りべっ甲)」と、すべて樹脂でできた「べっ甲風」の二種類があり、後者は価格が抑えられているぶん、割れやすいという面もあるようです。実際、「白べっ甲風」と表示された簪の素材がプラスチックだと明記されている例も見かけます。「べっ甲」という響きだけで本物と思い込まず、素材の表示をきちんと確認するのが、後悔しない買い物のこつです。
選ぶときに見ておきたいポイント
つまみ細工なら、布の色柄と手作りらしい風合いを楽しむものだと考えると選びやすくなります。べっ甲まわりの品なら、「本べっ甲」なのか「べっ甲張り」なのか「べっ甲風」なのか、まずそこを確認してみてください。価格差の理由がわかると、納得して選べますよね。観劇やお茶会など、かんざしを主役にしたいお出かけでは場面に合わせた装いの考え方も参考にしてみてください。
かんざし・髪飾りを探すなら、商品ページで素材やサイズ、仕様の説明を確かめてから選びましょう。記事で整理したポイントに照らすと、自分に合うものを見つけやすくなります。
まとめ
つまみ細工は布を折ってつまんで作る手仕事、べっ甲はタイマイの甲羅を材料にした希少な素材。成り立ちがまったく違うふたつだとわかると、かんざし選びの見え方も変わってきますよね。特にべっ甲まわりは「べっ甲」の表示だけで判断せず、本べっ甲か張りべっ甲かべっ甲風か、素材の中身まで見てみる。それだけで、次にかんざしを手に取るときの安心感がぐっと変わってくるはずです。
