「お義母様の三回忌に呼ばれたけれど、喪服はどこまで格を上げればいいのだろう」——法事のお知らせを受け取ると、こうした戸惑いを覚える方は少なくありません。通夜や葬儀と違い、法事の装いは回を重ねるごとに少しずつ変化していくため、判断に迷いやすいところがあります。結論から申し上げますと、法事の着物は「正喪服・準喪服・略喪服」という3段階の格を基準に、法要の回数とご自身の立場を照らし合わせて選ぶのが確実です。順番に確認してまいりましょう。
法事・法要における着物の格 正喪服・準喪服・略喪服
まず、喪服には格の異なる3つの種類があることを押さえておくと、以降の判断がぐっと楽になります。
正喪服
最も格式が高いのが正喪服です。染め抜き五つ紋の黒無地の着物が代表的な装いで、施主やごく近しい親族が着用します。目安としては三親等くらいまでの立場の方が該当することが多いです。紋の入り方によって格の見え方が変わりますので、お手持ちの喪服がどの格に当たるか気になる方は、紋の数と格の関係もあわせてご確認になると理解が深まります。
準喪服
準喪服は正喪服に次ぐ格で、四十九日や一周忌、三回忌までの参列者が着用するのが一般的です。親族についても、地域や家によって差はありますが三回忌までは準喪服を選ぶケースが広く見られます。招待状に「平服で」とだけ記されている場合でも、参列者としての立場であれば準喪服を軸に考えると安心です。
略喪服
略喪服は準喪服よりも格式を控えた装いで、いわゆる平服にあたります。七回忌以降の法要では、この略喪服や平服が中心になっていきます。「平服でお越しください」という案内は、決して普段着で構わないという意味ではなく、略喪服程度の装いを指すことが多い点に注意が必要です。
法要の種類で変わる装い 四十九日から七回忌以降まで
法事の装いは、回を追うごとに少しずつ格が下がっていくのが基本の流れです。四十九日や一周忌は準喪服、三回忌までは同じく準喪服を軸にし、七回忌以降になると略喪服や平服へと移っていきます。遺族の場合は一周忌までは正喪服を通し、三回忌あたりから徐々に格を下げていくという考え方が一般的です。「今回は何回忌にあたるか」を確認することが、装い選びの最初の一歩になります。ただし、法事の種類や地域性、ご家族の考え方によって着用する喪服が変わる部分でもありますので、迷われたときはご親族や施主の方にひと言確認しておくと確実です。
色無地・江戸小紋を略喪服として着るときの注意点
略喪服の段階になると、色喪服という選択肢が視野に入ってきます。色喪服とは、一つ紋または三つ紋を入れた色無地を指し、黒以外の色ではグレーや濃紫、焦茶色、濃紺、深緑といった地味な寒色系がふさわしいとされています。生地は光沢のない縮緬などを選ぶと落ち着いた印象にまとまります。色無地は紋の有無で格が変わる着物という性質を踏まえると、法事用に一枚仕立てておく際は紋の数まで意識しておくと、後々の格の調整がしやすくなります。
江戸小紋も紋を入れれば喪の場に対応できますが、どの柄でもよいわけではなく、「鮫」「角通し」「行儀」といった三役と呼ばれる格の高い柄を選ぶ必要があります。柄選びを誤ると格が合わなくなってしまいますので、この点は購入前にしっかり確認なさってください。
帯・帯締め・小物の選び方 数珠袋と袱紗
着物本体だけでなく、帯や小物にも格が関わってきます。喪の装いにおいては、着物と帯の色の組み合わせによって全体の格が決まるという考え方があり、黒喪服には黒喪帯を合わせるのが基本の型です。この帯合わせは地方によって違いが見られる部分でもありますので、迷われたときは黒喪服・黒喪帯の組み合わせにしておくのが確実です。
数珠袋については、色に絶対の決まりはありません。女性であれば紫や濃紺、グレー、黒といった控えめな色が基本で、男性であれば黒や紺、グレー、茶系の落ち着いた色が選ばれやすい傾向にあります。袱紗は、弔事では風呂敷タイプを用いるのが正式なマナーとされ、慶事・弔事どちらにも使えるリバーシブルタイプや、名前・家紋の刺繍入りの袱紗であれば一枚で両方に対応できます。数珠や数珠袋、袱紗の選び方は宗派や地域、ご家庭ごとの考え方が入りやすいものです。全国共通の正解があるわけではありませんので、初めて用意される方は周囲やご親族に一度相談しておくと安心です。
施主か参列者か 立場と法要の規模で変わる判断基準
ここまでの内容を踏まえると、装いを決める最後の決め手は「ご自身がどの立場で、どの回の法要に出るのか」という2点に集約されます。施主やごく近しい親族であれば正喪服から準喪服を軸に、一般の参列者であれば準喪服から略喪服を軸に考えるとよいでしょう。同じ三回忌でも、家族だけの小さな集まりなのか、大勢が集う法要なのかによって、実際に選ばれる装いの幅は変わってまいります。お立場・地域によって変わる部分ですので、案内状の文面だけで判断せず、施主の方や年長のご親族にひと言確認しておくと、当日になって装いが浮いてしまう心配がありません。
色無地と喪服の着物を探すなら、商品ページで素材やサイズ、使い方の説明を確かめてから選びましょう。記事で整理した違いに照らすと、自分に合うほうを見つけやすくなります。
まとめ
法事の着物は、正喪服・準喪服・略喪服という3段階の格を軸に、法要の回数とご自身の立場を重ね合わせて選ぶことで判断がしやすくなります。四十九日から三回忌までは準喪服、七回忌以降は略喪服へと、格を少しずつ下げていく流れを覚えておくと、今後どの法要に呼ばれても迷いにくくなるはずです。……と、ここまで手順を細かくご説明してまいりましたが、法事の装いというのは何より、故人を偲ぶ気持ちを静かに表すためのものです。装いを整えることは、その気持ちに寄り添う準備のひとつだとお考えになると、少し肩の力が抜けるかもしれません。当日は、ご案内いただいた立場にふさわしい一枚で、穏やかな気持ちでお参りなさってください。
